去年の夏は地元の盆踊りの役を仰せつかっていて、めっちゃ忙しかったので、なかなか川へ行けなかった。まあ夏に行っても鮎師がたくさんいて気を使うので、カヌーイストにとってはある意味、オフシーズンなのかもしれない。
でも秋は、鮎シーズンが終わりに近づき、カヌーイストがぞろぞろと川を目指してうごめいてくる季節。
そんな季節に身悶えして「どっか行きて〜!」とうごめいているジジイが一人。
そう、僕のことだ。
秋だし、せっかく行くなら紅葉を愛でられて、秘境感満載のところに行きたいってことで、長年憧れていた瀞峡〜熊野川のルートを下る事にした。
いつもの通り、ソロツーリング(ぼっちで寂しく川下り)だ。
川の上から紅葉を楽しむなんて、カヌーやパックラフトでしか味わえない贅沢!
神秘的な雰囲気があって、まさに「熊野」というイメージ。
長年憧れていたそのステージに、2018年11月に行ってきたので、いつものように曖昧な記憶とともに振り返っていこう。(秋の記事を5月に書くという違和感は無視してね)
ウォータージェット船でスタート地点まで。こりゃ楽だわ。
瀞峡〜熊野川は、和歌山県・奈良県・三重県の県境にあり、「一体どこの県のもんやねん?」状態なところ。
ここは観光用のウォータージェット船が行き来しているので、それに乗ってスタート地点まで行くという作戦だ。
まずは「ホテル瀞流荘」でジェット船のチケットを購入。
「カヌーを載せる」と行ったら、「じゃあ2人分の料金です」と言われたので、「いや、バックパックに入っていて、膝に乗せるので1人分でお願い!」と大人らしくないセコイ交渉術を駆使して手に入れたチケットがこれ↓。
小川口の乗船場にある駐車場に車を止め、カヌー用の服装に着替えてバックパックを「ヨイコラショッ」と背負う50歳のジジイ。
小川口の乗船場に、ウォータージェット船のお着きだ。
乗船場と言っても、普通に河原があるだけで、レッドカーペットならぬ黒いゴムのカーペットを敷いて乗客を迎えるというシステムなのだ。
本当にね。今思い出してもこの乗船時は恥ずかしったらありゃしない。
みんな普通の格好なのに、一人サーカス団のような格好で乗り込むジジイの姿を、みんな見て見ぬ振りをしていた。
たぶん僕も逆の立場なら、自分の子供に「しっ、見ちゃダメ!」と言っていたことだろう。
さて、いよいよ田戸に向けて出発!
ウォータージェット船は、川の水を取り込んで、それを勢いよく噴出すことで進む珍しい船。
それが猛スピードで熊野川を遡上していく。
今から自分が下る川を、ドキドキしながら下見ができるのが良いね。
途中、名所名所に止まって、案内してくれるのも、ありがたい。
約30分かけて、田戸の乗船場に到着。
ここが瀞峡の中心地になる。それがこの光景だ。
なんというか、すごく神秘的な光景。
そしてすごく静か。
観光客は割といたが、全体的にシンと静まり返った厳かな雰囲気を感じ取ることができるのだ。
河原には鮎の塩焼きやビールが売っているので、早速買って鮎を頬張る。ウマシ。
ここは有名な「瀞ホテル」がある。
昔はホテルだったのだが、今は飲食店になっていて、ハヤシライスが名物だ。
ここから眺める瀞八丁の風景が最高ということで、出発前にハヤシライスを食べながら絶景を楽しもうと思い、階段をフーフー言って登ってきた。(僕は何しにここへきたんだ?)
でも残念ながら営業は11時から。(この時点で10時半だった)
なのでハヤシライスは断念して、早速パックラフトの1日旅を開始したのだった。
静かすぎる瀞八丁をパックラフティング
パックラフトを膨らませ、早速瀞八丁へ漕ぎ出した。
そこには、他の川では絶対味わえない、まさにここだけのオンリーワンの風景が広がっていた。
瀞八丁は、切り立った崖に囲まれるようにある。
一番深いところでは水深20mにもなるらしく、当然川底は見えない。
それでいて流れがまったくなく、独特な雰囲気だ。なんというか、漕ぎ始めはちょっと怖さを感じたくらい。
しかしこの風景。たぶん他の川や湖でも見ることはできないだろう。
カヌーやパックラフトならではの風景に、しばしうっとり。
流れがないので、漕がなければ前に進まないのだが、とにかく景色が良いので全然苦にならないのだ。
瀞峡に別れを告げ、熊野川をダウンリバー
瀞峡を超えると熊野川になる。
熊野川はウォータージェット船が通るので、川底を深く掘ってあるので快適にダウンリバーができる。
ザラ瀬もないし、パックラフトの底をついて歩く(ライニングダウン)する必要もない。隠れ岩にケツをガツンとやられる心配もないので、すっごく楽なのだ。
しかも大河の様相を呈していて、ゆったり流れる大河を旅しているという感覚になる。
水質は超絶清流ってわけでもないんだけど、この規模の川としてはかなり綺麗なほうだ。
川底が透ける清流を楽しむタイプの川じゃないし、瀬や激流を攻略するタイプの川でもない。
広い川を、大きな大きな熊野の自然に抱かれながら、ゆったりと川旅を楽しむタイプの川だ。
と言っても僕はど素人だし、キャンプするわけでもないし、1日旅なんだけど 笑。
それでも「旅感」は十分感じることができたのだ。
静寂を突き破るウォータージェット船
と、ここまで書けば瀞峡・熊野川は何一つ欠点のない素晴らしい川なのだが、一つだけカヌーイストにとって厄介な事がある。
ウォータージェット船だ。
冒頭の動画を見てもらってわかるように、熊野川を猛スピードで上下してる。
しかも30分に1回くらいの割合で出くわすことになるのだ。
これは瀞峡にいるときも、熊野川を下っているときもそうなんだが、静寂を一人で楽しんでいると、どこからともなく「ゴゴゴゴゴゴゴーーッ」という爆音が聞こえてくる。
奴だ!奴が現れた!
熊野川の静寂をつき破る悪魔の咆哮。近づくものを蹴散らすかのように爆走するその悪魔の乗り物は、猛スピードで僕のパックラフトに近づき、去っていくのだ。
いや、すみません。
瀞峡まで連れてきてもらいながら、悪魔だなんて悪口書いて。
いいんですよ。これも瀞峡名物なんで。
ジェット船のおかげで、ソロツーリングがすごくやりやすいし。感謝してるんです。
ジェット船の船長さんも親切な人が多くて、カヌーを見つけると「ピッ」と警告音&挨拶をしてくれるしね。
ジェット船がやってくると、川の端っこに移動して見送る。
手を振ると、観光客も手を振ってくれて、フレンドリーな雰囲気になるのも良い。
ちなみにバシャバシャ写真を撮られまくっているのが、なにげに恥ずかしかったりする。
彼らは国に帰って(中国の方が多かった)、日本で出会ったサムライの勇姿を13億人の同胞に伝えたことだろう。
ジェット船を見送る時の秘伝とは?
ちなみにジェット船を見送る時は、ジェット船に向かってバウ(船首)を向けておくこと。
これは僕がいろんなブログを見て回って見つけた、熊野川ダウンリバーのノウハウ(秘伝)なのだ。
というのも、ジェット船が通り過ぎると同時に、結構大きめの波がやってくるのだ。
その波に向かってパックラフトを漕いで、波を乗り切るようにしないといけない。
慣れると、この波を乗り越えるのが楽しかったりするのだが、横向きのままでいると、波を横からかぶって転覆する危険性があるので、常にジェット船に対して垂直の位置どりをしないといけないのだ。
僕はど素人なので、失敗しないように事前にいろんなブログを調査して、脳内シミュレーションに余念がないのだ。そのおかげで、ど素人のくせに上から目線で記事を書けるのだ 笑。
よくいるでしょ?大した経験もないのに偉そうに言うノウハウコレクター。僕、それね。
紅葉も楽しめたし、熊野川サイコー!
気に入った河原を見つけると上陸して昼寝したり、飯食ったり、ぼーっとしたり、残り少ない人生について考えたり。
11月の熊野川は、紅葉も綺麗だった。川面から見る野趣あふれる紅葉の姿。
パックラフトやカヌーからでしかみられない風景だ。
こうしてのんびりと熊野川の1日旅を楽しんだ。
やがて出発点の小川口ジェット船乗り場に到着。
すると乗り場には、次のジェット船を待つ多くの観光客の姿が。
観光客にとってみたら、ジェット船を待っているのに、上流から得体の知れない乗り物(パックラフト)に乗って、ジジイがよたよたと下ってくる姿は、かなり異様に映ったことだろう。
その好奇の目が集中する河原に颯爽と降り立つ50歳のジジイ。
この歳になっても、青春を謳歌できるんだよ。
みんな、ジェット船じゃなくてパックラフトに乗って川旅しようよ。
さあ、僕が連れてってあげるよ。
そんな思いを胸に抱きながら、みんなの視線を避けるようにいそいそと撤収して、僕のささやかな瀞峡&熊野川1日旅は終わったのだった。
まとめ
11月の思い出を5月に書くと言う、全く季節感のない記事にお付き合いいただき、ありがとうございました。
瀞峡&熊野川は、まさにここでしか経験できないオンリーワンの魅力が満載のステージだった。
めちゃくちゃ清流ってわけでなく、激流区間もなくと言う川だったが、とにかく雄大で厳かな熊野の自然に抱かれつつ、のんびりゆったり楽しめる川だった。
とにかく、「川旅」と言う言葉が似合う川。それが瀞峡&熊野川だった。
ソロツーリングも、ウォータージェット船のおかげで楽々だったしね。
下り終わった直後に、「もう一回下りたい」と思ったほど、魅力満載の川だったのだ。
コメント
和歌山の清流とても素敵ですね!
私も川下り憧れます☆
これからも沢山の清流レポ期待してまーす(╹◡╹)
ぱっきーさん
コメントありがとうございます。
まさか、こんなふざけた川下りレポにコメントをくださるなんて。
僕も長年川下りに憧れ続けてきました。
実際にやってみると、本当に楽しいですよ。
これからも頑張って情報提供していこうと思いますので、これからもよろしくお願いします。